これは、前回の“彼の激しい嫉妬…”の続きになります。
遠くから、彼の声が聞こえる。かなり、怒っているのは声を聞けばわかる。
そっと、額に触れる冷たい感触に彼女はうっすらと目を開けた…。
「……ここは? 大佐?」
覚醒したばかりで、彼女は未だに意識がはっきりしい。 自分は、執務室から仮眠室に向かおうとして……眩暈がして?
「あぁ、リザ…目が覚めましたか?」
「……だれ?」
声のしたほうに目線だけ向ける。 額に感じる冷たいものは、声の主の手だと知った。 見覚えのない顔と聞き覚えのない声。
「お忘れですか? 士官学校時代の先輩の事を」
「士官学校?」
「ウィン・フールです」
「あ……っ!!」
彼の言葉にリザは何かを思い出し、声を上げる。 そして、見る見るうちに、表情が強張っていく…。 下唇をかみ締め、沈黙を守り続ける。起き上がり、彼の手を払いのける。
「覚えていてくれたんですね。ありがとうございます」
「……忘れられるわけ、ないでしょう」
低く唸るような声。 きつく睨む、冷たい目。
「忘れられないようにしましたからね…今でも覚えていますよ? 貴女のきれいな……」
「やめてっ!! これ以上何か言ったら殺すわよ……」
さらに鋭くなる眼光。だが、その中には恐怖などが見え隠れしている。
ウィンはそれを楽しそうに見つめるだけだ。
一瞬の隙をつき、ウィンはリザの顎に手を当てる。 それでも、視線を逸らす事無く、まっすぐ見据え続ける。
「その迷いのないまっすぐな瞳…それを崩したいと思うのも、また本心なんですよ。 彼から貴女を奪いたい…それも本心です」
「何の事かしら?」
「ふふ…マスタング大佐からですよ。 公私ともに引き離したい…そして彼を大佐という地位から引きずり落とす事も」
「…無理よ。私は彼に忠誠を誓った、一生着いて行くと…それに、そんな事は、私たち部下がさせないわ」
「意外と可能なんですよ?」
「…………」
「貴女が私と関係を持つ事で、ね?」
「なっ……!?」
ゆっくりと近づいてくるウィンの顔。それでもリザは抵抗出来なかった。 怖かったのだ…笑っているウィンの表情が…。
「中尉っ!! 具合はどうだね?」その場の雰囲気をぶち壊すかのように、ロイが仮眠室へ入ってきた。 ドアの向こうでは、部下たちが少し焦げているのが見えた。 その部下たちを押しのけて、中の様子を伺うヒューズの姿も見受けられた。
「た、大佐…」
「……何をしているんだね? フール大尉

」
「大佐殿には関係の無いことですよ。あぁ、リザ、決断したら、私の部署まで来てください。そうすれば、引きずり落とす事は止めておきましょう」
「――――っ!!」
ウィンが出て行くと、リザは一筋の涙を流す。
――逃げられない……「中尉…何かされたのか?」
心配そうなロイの表情が目に入る。 溢れる涙を抑えきれず、ロイにしがみ付いて泣き出した。 声を上げる事無く、ただただ涙を流し声を押し殺して…。
そんなリザを、ロイは優しく抱きしめるだけだった…。
アトガキ
なんだか、とんでもないシリアスな展開になってしまいました。
このシリーズ、思いっきりギャグでいこうと思っていたのに…(泣)
そして、ウィンは思いっきり黒いです。想像以上の腹黒さです…。 いいですねぇ、彼は。 黒くて…
書いているとき、泣きそうになって私の表情がまずい事になっていました…。
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